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私は立ち上がり、身仕度を整える。
「本当にごめん! 次はおごるから許して!」
どうにか笑顔を作った私は、雛子に頭を下げる。無理矢理だから、きっと引き攣っているだろう。
でも、今はそんな事を気にしていられない。
踵を返し鞄を手に取ると、私はそこから駆け出していた。
「あっ、円香! 気をつけてね!」
背後から雛子の声がするが、振り向かずに急いで店の階段を下りる。
ごめんね、雛子。胸騒ぎがするんだ。ちゃんと埋め合わせはするから、今日は本当ごめん!
自動ドアを潜り外に出ると、私は家に向かって走り始めた。
外はまだ少しだけ肌寒い。
冷たい風が私の頬を刺すようだった。
だが、気になどしていられ無い。
ポケットに入った携帯を、ギュッと握りしめる。
私はうちに帰り、確認しなくてはならない事があった。
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