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息を切らしながら、ようやく家に着く。
確かめる事。それは簡単な事だった。
お母さん帰ってたりしないかな?
キャラクターのマスコットの付いた鍵を鞄から取り出し、鍵穴に合わせ差し込む。
私はふと思い立ち、そのままドアノブを握った。
まさか……ね。
鍵を回していない。
嫌な予感がして、恐る恐るドアノブを捻った。
カチャ。
聞きなれた金属音。
そして、開くはずのないドアが開いた。
「嘘……でしょ。なんで……」
私は独り言を呟きながら、ゆっくりと扉を引いた。
日の落ちかけた夕暮れのせいで、玄関は真っ赤に染まる。
シンとした冷たい冷気漂う静寂だけが、私を静かに迎えた。
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