保健室の××な事情

4/6
4501人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「あーあ…。もう可愛い葵センパイは見れないのかな」 「さりげなく失礼なこと言うなよ」 「失礼なことなんて言ってないですよ」 「男が可愛いって言われて喜ぶかよ」 「でも、葵センパイが赤くなるところが好きだったんです」 新鮮だったっていうのもあるけれど、 すごく、すごく可愛かったんだ。 一緒にいて安心できたのも、葵センパイのそういうところが大きかったと思うし。 そうじゃなければ、響のことがあって男の子を敬遠していた私の心の中に、あそこまですんなり入ってこれたわけないんだ。 「じゃあ、今の俺は好きじゃねぇの?」 「えっ?」 急に低くなった葵センパイの声に驚いて、目を大きく見開く。 言われたことが一瞬、理解できなくて呆然としていると、葵センパイはゆっくりと起き上がった。 「ミーコは、照れ屋ですぐに赤くなる俺が好きなんだろ?」 「そ、それは……」 さっきまで浮かんでいた笑みは消えていて、無表情に近い葵センパイの顔。 いつもは感じる人懐っこさまで一緒に消えてしまっていて、私は無意識にコクンと喉を鳴らした。 「今の俺じゃだめなんだ」 「そんなことないです」 「本当に?」 私を見る葵センパイの瞳が、悲しそうに揺れている。 それを見た途端、私は葵センパイの手をギュッと握りしめていた。 「葵センパイといると、すごくドキドキするんです。だから……」 「今もドキドキしてんの?」 「は、はい」 「そっか……。なら、確かめてもいい?」 「……へ?」 今、なんて言ったの? 葵センパイの手が、ブレザーに包まれた私の肩に触れる。 そのままゆっくりと下りていって――、
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!