4500人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーあ…。もう可愛い葵センパイは見れないのかな」
「さりげなく失礼なこと言うなよ」
「失礼なことなんて言ってないですよ」
「男が可愛いって言われて喜ぶかよ」
「でも、葵センパイが赤くなるところが好きだったんです」
新鮮だったっていうのもあるけれど、
すごく、すごく可愛かったんだ。
一緒にいて安心できたのも、葵センパイのそういうところが大きかったと思うし。
そうじゃなければ、響のことがあって男の子を敬遠していた私の心の中に、あそこまですんなり入ってこれたわけないんだ。
「じゃあ、今の俺は好きじゃねぇの?」
「えっ?」
急に低くなった葵センパイの声に驚いて、目を大きく見開く。
言われたことが一瞬、理解できなくて呆然としていると、葵センパイはゆっくりと起き上がった。
「ミーコは、照れ屋ですぐに赤くなる俺が好きなんだろ?」
「そ、それは……」
さっきまで浮かんでいた笑みは消えていて、無表情に近い葵センパイの顔。
いつもは感じる人懐っこさまで一緒に消えてしまっていて、私は無意識にコクンと喉を鳴らした。
「今の俺じゃだめなんだ」
「そんなことないです」
「本当に?」
私を見る葵センパイの瞳が、悲しそうに揺れている。
それを見た途端、私は葵センパイの手をギュッと握りしめていた。
「葵センパイといると、すごくドキドキするんです。だから……」
「今もドキドキしてんの?」
「は、はい」
「そっか……。なら、確かめてもいい?」
「……へ?」
今、なんて言ったの?
葵センパイの手が、ブレザーに包まれた私の肩に触れる。
そのままゆっくりと下りていって――、
最初のコメントを投稿しよう!