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葵センパイの指が、私のブレザーのボタンをひとつ外した。
「せ、せんぱい」
ここまでくれば、葵センパイが何をしようとしているのかくらいわかる。
慌ててその手を掴んで止めると、葵センパイは意地悪そうに微笑んだ。
「ミーコの手、震えてる」
「そ、それは葵センパイが……」
「俺が?」
「……急に、へんなこと……しようとするから」
恥ずかしくて葵センパイを直視できなくなってしまう。
だけど、なんとなく葵センパイが楽しそうにしていることだけはわかった。
やっぱり葵センパイじゃないみたい。
こんなふうに大胆になっちゃうなんて……。
「木下センパイの病気がうつっちゃったんですか?」
「青葉と一緒にすんなって。俺がこういうことしたいって思うのは、ミーコだけなんだし」
「せんぱ……」
「それに、へんなことじゃないだろ? 俺たちは付き合ってるんだし」
「そうなんですけど……」
それでも恥ずかしいと思うのが、乙女心ってやつだと思う。
それに――。
「ここ、生徒会室ですよ? そろそろ本当に誰か来ちゃうかも」
「……残念。またお預けか」
葵センパイは小さく息を吐き出すと、ゆっくりと起き上がった。
どことなく、ふてくされた表情を浮かべているようにも見える。
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