保健室の××な事情

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葵センパイの指が、私のブレザーのボタンをひとつ外した。 「せ、せんぱい」 ここまでくれば、葵センパイが何をしようとしているのかくらいわかる。 慌ててその手を掴んで止めると、葵センパイは意地悪そうに微笑んだ。 「ミーコの手、震えてる」 「そ、それは葵センパイが……」 「俺が?」 「……急に、へんなこと……しようとするから」 恥ずかしくて葵センパイを直視できなくなってしまう。 だけど、なんとなく葵センパイが楽しそうにしていることだけはわかった。 やっぱり葵センパイじゃないみたい。 こんなふうに大胆になっちゃうなんて……。 「木下センパイの病気がうつっちゃったんですか?」 「青葉と一緒にすんなって。俺がこういうことしたいって思うのは、ミーコだけなんだし」 「せんぱ……」 「それに、へんなことじゃないだろ? 俺たちは付き合ってるんだし」 「そうなんですけど……」 それでも恥ずかしいと思うのが、乙女心ってやつだと思う。 それに――。 「ここ、生徒会室ですよ? そろそろ本当に誰か来ちゃうかも」 「……残念。またお預けか」 葵センパイは小さく息を吐き出すと、ゆっくりと起き上がった。 どことなく、ふてくされた表情を浮かべているようにも見える。
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