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……今まで誰にも負けたことがなかった。
悔しさを滲(にじ)ませながら相手を睨みつける。
申し訳なさそうに彼女は言った。
「我(われ)に負けたからとて、恥じる必要はない」
怒りで頬が熱くなるのが自分でもわかった。
けれど、彼女に決して勝てないことは身をもって知ったばかりだ。
「いや、言い方が適切ではなかったかの……お主が弱かったのではないのだ。我は少々、この世の理(ことわり)に反する身の上であっての」
風が金色の髪をそよがせると、ほつれた髪を煩げに押さえ、彼女は続けた。
「どうだ、もう悪さをせぬと誓ってくれれば、これ以上どうこうするつもりはないのだ……」
「仕方がない、あんたの僕(しもべ)になり、その命に従おう……」
その言葉に彼女は明らかに狼狽する。
「な……そんなつもりはないぞ。いや、それは困る」
「もう決めた」
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