475人が本棚に入れています
本棚に追加
/502ページ
「ちょっと、クーちゃん!埃(ほこり)っぽくなるから止めてよ!」
「む~!アリベル!メシは!?」
「もう出来るってば!」
言うと同時に、ちょっと乱暴にキュウリの蔕(へた)を切り落とすと、包丁の音に驚いたクーちゃんがすぐに押し黙った。
……あ、そうそう。
忙しいスーパーモデル様は、今日は久しぶりの休日だ。
夕方まで、ずっとダラダラゴロゴロ。
そのうちカビが生えるんじゃないかとさえ思う。
……いや、もう生えてたりして。
僕が気付いていないだけでさ。
「クーちゃん、料理出来たから。運ぶの手伝ってよ」
「…………。」
包丁を洗いながらソファーに呼び掛けてみたけれど、反応は無い。
……もしかして……さっきので拗ねちゃったとか?
……い、いやいや!
あれはどう考えても僕が正しい!
そもそも日頃の忙しさを言い訳にして、料理を全部丸投げにしたクーちゃんが悪い!
「あの……クーちゃん?」
「…………。」
使い終わった調理用具を洗い終わった後、タオルで手を拭きながらもう一度呼んでみたけど反応は無い。
……な、なんだろう、この罪悪感。
いや、僕は昔からクーちゃんのことを甘やかしすぎなだけだ。
なんて思いながら、ソファーに視線を遣ると。
「……なに?起きてるんだったら返事してよね」
大きなウサギのぬいぐるみのユカリさん。
そのユカリさんを抱えながら、ユカリさんの陰からジッとこちらを見ていた薄紫の瞳。
僕が言えば、慌ててユカリさんを盾にして顔を引っ込めた。
「……クーちゃん?」
二人分のサラダを手にしながらリビングへと足を踏み入れて。
テーブルの上にサラダを置いた。
で、ユカリさんを引きはがす。
するとワタワタしながら世のスーパーモデル様が姿を現した。
「……なに?料理してる僕の顔に何かついてた?」
「……い、や……アレだ」
「なに?」
「……………………包丁」
「…………。」
「……あんな……勢いよく切ったら…………刃こぼれ、するかなって……」
目を逸らしながら。
恐らく必死に頭を働かせながらの言葉に、思わず溜め息。
最初のコメントを投稿しよう!