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「……クーちゃんさ」
「…………な、なんだよ」
「……最近……やたらと嘘つくの、下手になったよね」
「……べ、べつに嘘なんて――」
ソファーに上がり込むと、ギシリとスプリングが軋んだ。
ユカリさんを床に転がして、肘置きを背もたれ代わりにしていたクーちゃんに、覆いかぶさるようにして顔を近付ける。
「……っ、ち、近い!!離れろ!」
視線を逸らして、右手で必死に僕の身体を押しのけようとしつつ、左手では武器を探している。
残念ながらクッションは僕の足元。
床に転がるユカリさんには、クーちゃんの手は届かない。
「……クーちゃん、明日は仕事だっけ?」
「……は!?……い、いや……休み……だけど……」
突然の僕の質問に、面食らったのか。
クーちゃんは戸惑いつつも、そう返した。
……なるほどね。
明日も休みなんだ。
それは良いことを聞いた。
「ッ!ア、アリベ――ッ」
スウェットの中に手を忍ばせて、腰から脇腹の辺りに手を這わせていくと、ビクリと小さな身体が反応する。
……昨日、クーちゃんは爆睡しちゃってたし。
そもそも、さ。
「……そろそろ一ヶ月、経つよね?」
「…………。」
「しかも今日、僕の誕生日なんだけど」
「………………。」
こう言っては何だけど。
僕が誰かと付き合い始めて、そろそろ一ヶ月。
ってゆー時に。
未だに手を出していないのは、極めて異例だ。
……ぶっちゃけ、この一ヶ月。
よく堪えられたと思う。
だってさ、毎日寝る時には隣にいるわけで。
しかもめちゃくちゃ無防備なわけで。
むしろ起きていても隙だらけなわけで。
その状態が続いて、もう天使のアリベル君だって安らかに眠りたい。
そんな感じだ。
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