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それからの感覚はとても不思議なものだった。
暗い闇の中に落ちた私の意識は、何かゆらゆらと揺らされるような感覚で引き戻された。
回りに目を向けるも自分の姿が見えない程の暗闇に血の気が引くのがわかる。
私は何をしていた?
図書室で本を読んでいて、慌てて部屋に戻ろうとして月を見て・・・
酷く痛む頭を押さえて身体を起こしてみても、どうやら腕を背後で縛られているようだ。
腕の点滴の感覚もない。
頬に感じるコンクリートとは違う冷たい床の感触が、私に此処が病院とは違う場所だという事を確信づけさせた。
それから幾分か目が暗闇に慣れはじめて始めて見れたものは、無機質な何もない小さな部屋と、大きな鉄格子。
「何・・・これ・・・・・
なんで私こんな場所に縛られてるの・・・?」
そう思うのに、原因不明の頭の痛みによって恐怖心さえも拭い取られてしまい、ゆっくりと考える事を放棄しはじめた私に遠くから近付いてくる提灯のような光と人の足音が聞こえた。
あの人に聞けば此処が何処だかわかるかもしれない・・・っ!
幸い足が縛られてはいないため藁にも縋る思いで鉄格子に近寄り声を張り上げる。
「あ・・・あの!!
すみません!!!」
私の前で止まったその人は、私が話し掛けた事に驚いているのか深い紫紺の瞳をこちらに向けていた。
でもその瞳はすぐに細められ、彼の瞳はまるで無機質で、目の前にいる私でさえうつしていないような感覚に囚われる。
その間に彼は大きな鉄の扉を開け、私は部屋から引きずりだされた。
「立て
抵抗すれば斬る」
彼の声が静かに響き渡り、カチャリ、という重々しい金属の音が私の耳に届く。
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