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乙女は幕末に落っこちて。
「いったぁ……」
あんのデブ猫ぉぉ!
うちは恨みのこもった眼差しで木の上を見つめる。思いっきり木から落ちた。痛い、痛すぎる!
しかし、そこに猫の姿はなかった。
うちは、やっと異変に気がついた。
周りの様子が違う。古めかしかった旅館の塀は、新築のようにきれいになっている。みきちゃんだって、気づけばいない。
「ぶくしゅんっ」
あまりの寒さにうちはくしゃみをした。何せパジャマにパーカー一枚だ。雪の降るこの地じゃ、寒いに決まって
「る?」
あ、あかん。
思わず心の声が漏れてしもた。
うん、今は雪が降っている。何故だろう。もうすぐ春……やんな?
ざく、ざく……
思考回路がキャリーオーバーで爆発しそうになっているうちの耳に、雪を踏む足音が聞こえてきた。
だ、誰か来た……
「何奴」
なにやつ?
時代劇で聞くようなそのセリフ。
「怪しい奴だな」
すらり、とその人が抜いたのは、太陽の光を反射してギラリと輝く刀。
しん、けん……?
その場でうちは、気を失った。
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