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「…っん、……?」
ゆっくりと。
うちは目を覚ました。
ここは、どこだろう。
見覚えのない天井に、見覚えのない布団。薬品の匂いに包まれたこの部屋は、どこなんだろう。
「あ、起きましたか。」
ぐぐぐっと顔を動かして、隣を見つる。そこには、知らない男のひと。
「だれ……?」
「うん、それはこっちのセリフですから。
まったく…今時刀をみただけで気絶するなんて、どこのお坊ちゃんですか。
しかも屯所に侵入するなど……あなた、死にたいんですか?」
「…………」
うぅーん。
どうやらうちは、旅館じゃなくて、「トンショ」というところに連れて行かれたらしい。
死にたい、とは、木に登って落ちたことを言われてるんだろう。
木に登るなんて、死にたいのか!……みたいな。
「すみません……」
「すまんでは済まんと思いますけどね。あなた、名前は?」
「櫻木、深声……」
「みもり?変わった名前ですね。
それに、女みたいだ」
「女ですヨー」
うちは少しむくれて言った。
男のひとは、あっけらかんに
「あら、それはすんまへん」
と、ひとこと。
「あなたは?
何て名前なん、ですか?」
「おれ?
おれは山崎丞ですね」
「やまざき、すすむ……?」
どっかで聞いたことあるような。
ん?あ、それは山崎退か。
「山崎退じゃなくて?」
「くはっ。
何やそれ、誰やねんっ…
さ、さがるって……」
散々笑ったあと、山崎さんは思い出したように「あ」と呟いた。
「じゃあ、えっと…櫻木さん。
近藤局長と土方副長んとこ行きましょうか」
うちは、訳がわからないまま、山崎さんに引っ張られるようにしてその部屋をあとにした。
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