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ずるずると山崎さんに引きずられるようにして、うちは保健室のような部屋から出される。
「………」
その瞬間、うちはキョロキョロと辺りを見回した。
純和風の屋敷のようなところ。
「あ……?」
うちは思わず声をもらした。
塀の外には、電信柱が一本も建っていない。それどころか、目立つビルがひとつもない。
どこなんだろう、ここは。
どこかのセットにでも連れてこられたのだろうか。なら、この山崎さんは役者さん?
確かに、色黒で整った顔をしている。でも、見たことない顔だ。
役者なら見覚えがあってもいいものだが、売り出し中なのか。
にしても、うちをこんなところに連れてくる意味が見いだせなかった。うちはただの素人で、平凡な女子高校生。
もし監督が、凡人を使いたいと言うなら、いきなり連れてくるなんて無礼はしないはず。
そんなことを思っていると、山崎さんがひとつの部屋の前で足を止めた。
うちは山崎さんを見上げる。
「大丈夫ですよ。
いきなり斬られたりしませんから」
その言葉に安心する反面、他意があるようでぞくっとする。
「失礼します、山崎です。
例の子を連れてきました」
「よし、入れ」
襖が開いた瞬間、ぽいっとうちは投げ入れられた。
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