乙女は幕末に落っこちて。

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「いったぁー……」 山崎さんに部屋に投げ入れられ、うちは見事に腰を打った。畳だから、結構痛い。 うちは衝撃とともに瞑ってしまった目を、うっすらと開けた。周りには着物をまとい、腰に刀をさした、時代劇に出てきそうなイケメン様たち。 何とも美しく、威圧感のある光景だった。 「おい」   「はいっ!」 見た限り一番目つきの悪い男の人が、口を開いた。 うちは声をかけられて、即座に返事をする。こ、怖い……。 「名前は」 「櫻木…深声です」 「出身」 「兵庫…」 「あ?ヒョーゴ? どこだそれ。異国か?」 「に、日本ですっ」 びくつきながら訂正する。 オーディションかな?とか思ったけど、何かこれ事情聴取みたい。 兵庫もしらないアイタタタ集団に囲まれて、うちはどうすればいいんやろ。 「それでその、お前の着ている着物は何だ?」 「きもの? あ、これはパジャマですよ」 「ぱ…ぱじゃ…?」 言いにくそうにしているその人は、何だか可愛い。 「寝るときに着るもんです」 てか、何でうちはパジャマの説明をあほみたいにしてんのやろ。 うちは意を決して聞いた。 「あの、質問していいですか?」 「あぁ」 「ここ、京都、ですよね? 何かの撮影のスタジオですか?」 「すたじお?お前、寝ぼけているか?ここは壬生浪士活動拠点の、」 「みぶ…?え、ちょっ待っ」 頭がパンクしそうだ。 壬生浪士って、何か聞いたことがある。確か、お父さんが見てた時代劇の…… 「しんせんぐみ……」 ここはスタジオじゃない。 ってことはうち、タイムスリップしましたか…? ってあかんあかん。ファンタジーに逝ったらあかん。 でもそんなんやっぱり…… 「あの!今現在、何年ですか!?」 「文久、3年」 あかんわ、こら……。
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