乙女は幕末に落っこちて。

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もう、これはタイムスリップしたと認めざるを得ないですね。頭の中の結論係が、めがねを光らせて言った。 そして、続ける。 もし彼が演技をしているならば、ぼくは迷いなく主演男優賞をさしあげます。 そう、ですよね……。 脳内会議はあっけなく終わり、うちはうなだれた。 だとすれば、うちはどうすればいいのだろうか。 こんな武士がうろついている世の中で、生きていく自信なんて1ミリもない。 うちは、とりあえず事情を説明することにした。 「あ、あの、えと、」 「?……土方だ」 「う、あ、ありがとうございます。えと、土方さん」 うん、少し落ち着こう。 うちは小さく深呼吸する。 そして、訴えた。 「うち、タイム…じゃなくて、と、時渡り?してきたみたいなんです。 平成って言う、数百年もあとの世界から」 言えた。 けどやっぱり、周りの反応は冷たいもので、完全にうちは痛い子である。 うちは証拠を探してポケットをさぐった。すると、平成を代表する文明道具を発見する。そしてそれを、土方さんにつきだした。 「こ、これ!! 携帯電話って言うんです!! ちょっと待って下さいね」 「お、おぉ」 うちは、何故か切れていた携帯電話の電源を入れ、起動させた。
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