1 プロローグ

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「こちらに来て、よく顔を見せてごらん」 「はい」 近付くと、ますます父様の不健康さが目止まる。 大丈夫なの? 「大きくなったな。今年で16か?」 「はい」 「ふむ。 そのことなのだがな、お前の婚儀の日取りが決まった。」 「けっ…こんの日取り?!」 許婚もいない段階から、いきなり結婚?! この国では、10歳に満たない段階で許婚が決まり、絆を深めてから16~18歳で結婚へと辿り着く仕組みである。 それに、通常ならば年長者から順に嫁ぐものでは? 「何故、と言いたい顔だな。 まぁ、長くなるから座りなさい。」 お前の好きなりんごタルトも焼かせたんだ、と笑顔で言う父様。 なんだか嫌な予感しかしないのだけれど…。 りんごタルトも来て、失礼しますと給仕の者が退出してたっぷり20数えたとき、父様はおもむろに口を開く。 「ラスと、アヴァンス帝国第1王子ユリウスの結婚が決まったのだよ」 「はぃっ?!」 アヴァンス帝国、と言えばまだ建国100年ほどしかない、海に面する国。 書物よりも剣を振り回すような野蛮な国である。 しかも、魔物だとか魔法使いだとかがごちゃごちゃ居るという気味の悪い所。 そんな所に、何故?! 「そんなの、どうして山ほどいる居る姉様たちでなく私なのですか?!」 そうだ、この前9番目の姉様が外国に嫁いだばかり。 順番的にはあと4人の猶予があるはずなのだ。
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