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しかし、男性が普通ではないのは見てすぐわかった。
上下グレーのスウェットに左右で違うサンダル。
住所と電話番号が書かれたネームプレートと携帯を首から下げている。
こんな姿をした人をかつてサオリは毎日見ていた。
「まったく、お父さんがどれだけ心配したと思ってるんだ」
ぶつぶつと文句を言いながらも男性は嬉しそうだった。
男性は40代半ばくらいだろうか。
160cmあるサオリより頭ひとつ分背が高くスーツでも着ていれば仕事のできるサラリーマンに見えただろう。
このままついていくわけにもいかないことはわかっていたがつかまれた腕を振り払う気にはなれなかった。
それに人違いと言って通じる相手ではないことも経験で知っていた。
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