春の嵐は突然に

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時間は九時。 「練習は四時にはおわるからぁ。いってきまあす!」 「僕も五時には帰るから母さん、お弁当有り難う」 「私も、沙羅ちゃんちでクラスメイトと女子会するの。楽しみ!。行ってきまーす」 三男の頼は星ヶ塚東六年生になる。 日に焼けた肌、つんつんの黒髪。 グリグリとした真っ黒の目が、近所のおばちゃんたちに『子供らしい』と、無駄に可愛いがわれていた。 性格は柴犬。 今度リトルリーグで試合があり、今日から一塁を任される。 無駄にハイテンション。 やたら空回り。 我が家のちょっとした台風の目だ。 次男の海は星ヶ塚中学二年になる。 さらさらの黒髪と小さな顔、あまり表情は変わらないのが『クール』で素敵と近所のお姉さま達に評判だ。 性格はクロヒョウ。 かなり頭がいい奴で、今から受験の事を考えている。 昨日から、図書館で大学生から勉強を教えてもらう無料の集会に参加していた。 友達数人と明日までだそうだ。 よくできた弟だが。 時折、頼より厄介な時がある。 たまにだが…… そして長女。愛(みい) 星ヶ塚東小四年。 母さん似のたれ目で柔和な雰囲気。 緩いクセ毛を肩までたらして、毎日ブローに熱心だ。愛嬌があって笑うと可愛い。 こんな『孫』がほしかったと近所のじいちゃんばあちゃん達には大人気。 しかし 性格は魔女。 大事な可愛い妹だが、その年で男の話をしないでほしい……。 電話でのお友達との会話を端で聞いてて、お兄ちゃん心臓が痛くなります。 しかも女子会って……。 三人を送り出した後、牛乳をタップリいれたカフェオレをソファに座り飲む。 時計を見上げ、十時を指す頃合いに、そろそろいくかと腰を上げた。 すると 「レイちゃん。山香田屋に制服取りに行くのは、今日だっけ。 ……もしかして今から電車で行くつもり?」 「そうだよ。新しい駅が出来たから『ちゅーおー』に五分で着くし…… 何?地下の食料品売り場でキンセー饅頭でも買ってこいと」 「私も行くわ。車にしましょ」 オレは振り返り、カレンダーを指差す。 「……婦人会の会合は、十時半からじゃなかった?」 「それがねー早急、婦人会長さんとばったり会ってね~。十時から別のグループが公民館を利用するって、ダブルブッキングよ。だから後日」 クスクス笑って。 「だから、ね。 久しぶりに、レイちゃんとドライブしようか?」 楽しげにいった。
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