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否定できない。ウラルは黙って眼を閉じ、僅かに逡巡してから再び瞳を開けた。クスッと微笑む。
「そうでしたね。私は異教徒であるマグナ人を追放したい、貴方は排斥したい。若干意味は異なりますが、根本は一緒ですから」
「先見のあるジョーカーなら、今日ここに呼んだ意味が解るだろう?」
「“最後の仕込み”ですか?」
「それともう一つ、武闘大会に参加してもらいたい。既に手続きも済ませてある」
「武闘大会に……。私が、何故?」
明後日開催される武闘大会は、衆目の意識をそちらに向ける役割の方が大きい。大会自体に大した意味など持たないのだけれど。
「実はイレギュラーが発生してね。部下の報告だと、若い男がマグナ人を助けたようなのだよ」
「……若い男、ね」
「黒い服に身を包んだ銀髪の男らしいがね。その男も大会に参加するようでね、出来れば見張っていて欲しいのだよ」
「それなら、構いませんが……」
ウラルは黙したまま指を二本立てる。それか意味するのはたったの一つ。
「二万ガルドかい?」
「ええ、最後の仕込みと見張り代で二万ガルド。お安いでしょう? 何しろ都民の税金を不当に押収しているんですから」
「いやはや、君にそれを知られたら儂としても二万ガルド支払うしかないか。……ジョーカー君は守銭奴だねぇ」
「まぁ、私が崇めている神様はお金の神様ですからね」
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