561人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………」
ネアは何も言わずに、その場で正座する。手を後ろ腰で組み、無防備な姿を晒した。
――まぁ、ネアの頼みだから仕方無いよね。
幼い頃から知っている彼の頼み。訊かずとも解る。ネアが何を望み、何をサラに頼んでいるか手に取るように解ってしまう。
サラは鋼鉄製の紐をネアに巻き付ける。
オーパーツとは神々の遺産だ。その一つ一つに特殊な能力が付加されている。まるで紐自体に意思があるかのように、ネアの身体に触れた瞬間、勝手に彼の足首から首元までをキツく縛り上げた。
「な、なにしてんだよ!?」
「お前は、仲間が奴隷市場に売られるかもしれないと思っているんだろう? だったら、それができないようにオレを人質にすれば良い」
期待通り、サラは健太に刃物を渡した。これでいつでもネアを殺せるように。
――あわよくば、ネアの手足の一本でも切り落としてくれると嬉しいんだけどなァ。
「言っておくが、オレは強い。お前に殺されそうになったら、反射的に反撃するかもしれない。だから、自分で身体を縛った。これなら、反撃される前にオレを殺せるだろう?」
健太はおろか、翔子もジュズ婆も息を呑んだ。異端な人間を見ているとでも言いたげな瞳が、全てを物語っている。
――ネアはいつだって可笑しいよ。今に始まった事じゃないね。
最初のコメントを投稿しよう!