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ネアは狂っている。サラはそう思う。勿論、そんな考えに至るほどの証拠を掴んで、反芻して、吟味して――。
その結果、サラは願う。
自分以外の誰かが、ネアの両手足どれかを切り落としてくれないかなと。
彼の暴走を止めてくれないかなと。
それを願うだけで、実行に移せない自分の意思薄弱さは実感しているし痛感もしている。
――だから、私は何もしない。
ネア・ラピオラスを止められなかった自分は共犯者。共に断罪されるべき存在だから。
だから、何も出来ない。
「アンタ、頭可笑しいだろ! 何でそこまでするんだよ! 俺たちマグナ人なんかのためによッ!」
「さぁな。そんなもの、オレが聞きたい」
即答した直後、嘆息。
「強いて言うなら、自己満足だろうな」
誰かに言い聞かせる訳でもなく、
誰かに問い掛ける訳でもなく、
誰かに訴えかける訳でもなく、
誰でもない自分自身へと囁くように独白する。
「オレはオレが自己満足するために、マグナ人を助けた。優しくもない。強くもない。聖者でもない。……ただの偽善者だ」
そして、一息。
「ただの、親不孝者だ」
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