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「こんなところにいたら風邪引くよ」
同日、深夜。
サラは悪戯心からネアの寝台に入り込もうとしたのだが、布団の中が藻抜けの空である事に気付いた。
どこに行っているのか気になり、サラ特有の気配探知を使ってその足取りを追ってみると、やはりというかネアがいた。
交易都市内部を流れる小川。芝生の整った川原に座っている姿は、スゴく幻想的だった。下手すれば女の子にも見える中性的な容姿に加え、線の細い華奢な身体なのが致命的だ。
ネアは振り返ることすらせずに、お前かとため息混じりに答えた。
「風邪なんて、小さい頃以来引いていない。夜風に当たったぐらいで病気になるか」
「だからって、今後一切病気にならない保証は無いでしょ? 年上の忠告は真面目に聞くもんだと思うけどね」
「余計なお世話だ」
いつも通りの反応。昼間も見た黒い服装。だからこそ、銀髪が良く映える。尤も、トレードマークの一つと言ってもいい黒いニット帽を今は被っていないのだが。
――ネアって、言葉や表情からは読み取りづらいけど、どこかしかに変化が現れるんだよね。
解りやすい人間なのかもしれない、意外と。
「隣、座ってもいいかな?」
「座ってから聞くなよ。オレの意思なんて最初から無視なんだろ?」
「細かいことは気にしない気にしない!」
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