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「細かいことだろうが何だろうがな……」
ネアの憂う瞳が、更に曇る。月明かりが彼の横顔を照らしているけれど、サラは直視できなかった。
――やっぱり、私にはネアを“殺す”ことは出来ないね……。
「それで? どうしてオレがここにいると解ったんだ?」
「唐突にね、私の悪戯心が沸き上がってアンタの寝台に忍び込んだわけ。そしたら、ネアがいないじゃない? どうせどこかで黄昏てるだろうなぁって思って、探しちゃった!」
文末にハートマークをくっ付けそうな勢い。サラの内面を知らない人間が聞いたなら、お茶目な物言いだと判断できるだろうが。
「オレの寝台に忍び込んで、お前なにしようとしてたんだ?」
「悪戯」
「その内容を聞いているんだが?」
「顔に落書きしたり、全裸にさせたり、髪の毛を一本一本抜いたり――」
「――もう良い。お前、自分の歳を考えたことあるのか?」
「あら! 女性に向かって歳のことを言うなんて、ネアったらいつの間にそんなこと言うようになったのよ」
サラがニコニコして言っても、ネアはチラッと一瞥しただけで言い返さなかった。
ずっと小川の水面を見詰めて、思い耽っている。
――やっぱり、あの事かな?
直接問い質しても無駄だと思うからこそ、外堀を埋めることにしようと決意。
「あの子達との会食、ネアはどう思ったの?」
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