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「勘違い?」
何をどう勘違いしたら、サラの体重をネアに教えることになるのだろうか。
女性にとって体重とは常日頃から気を付けるべきもので、けれど他人には絶対に知られたくないもので、それでも時として自ら告白しなければならない状況もあるだろうけれど。
「オレとしても、別に知りたいと言わなかったんだがな。従業員の余計なお世話、小さな親切といったところだ」
ネアは頬を人差し指で掻く。サラと視線を合わせようとしない。僅かに顔が紅潮しているのも不自然ポイントである。
「ねぇ、ネア」
「何だ」
「アイス……奢ってあげようか?」
「本当か!?」
ネアが大声と共に振り返る。
「うん。ネアは自制の心が凄いもんね。自分では決してアイスを食べようとしないもん。だから、私が買ってあげよう!」
「よし、久々のアイスだな。何が良いのだろうか。かき氷か、いやいや抹茶アイスも捨てがたいが、だがここは王道のチョコレートも――」
「だからさ、従業員さんは何を勘違いしてたのかなー?」
「あぁ、その事か。オレとお前が若い夫婦だと勘違いしていたみたいでな。奥さん、スゴく綺麗ですねって言ってきたんだよ。プラスお前の体重も」
さすが、アイスの力だ。
たった数秒前の事を無しにして、あの口の固いネアから情報を聞き出してしまうとは。
――それにしても、夫婦かぁ。
「ネアは私と夫婦って言われて、どう思ったの?」
「それは勿論――」
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