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ネアとサラが予想だにしない人物と言葉を交わしている頃、ウラルは交易都市で最も偉い人間の所を訪れていた。
石造りの豪邸。周囲一帯には警備員が張り付き、いざという時に備えてオーパーツを武装した戦闘集団までいる始末。さながら一大拠点である。
中でも、その最奥にある部屋。おそらく交易都市で一番潜入が難しいであろう秘匿の場所だ、その部屋のソファーにウラルは腰かけていた。
机を挟んで反対側に、もう一人男がいる。華奢な体格、片眼鏡を掛けており齢六〇前と判断するべき。
白髪も半分まで侵食済みである。
「よく来てくれたねぇ、ウラル君」
「私のことはジョーカーと御呼びください。本名がどこからバレるか解りませんからね」
口火を切ったの老人の方だった。相変わらず蛇のような人間だ。全身を舐め回すような視線と言の葉が不快さをもたらした。
「ジョーカー……ジョーカーねぇ。君が望むのならそうしよう。確かに君が所属している組織にバレたら、事が事だからね。……しかし、君の組織も儂がしていることには寛容な判断を下してくれると思うがね」
「さぁ、それはどうでしょう。異教徒であるマグナ人を排斥するのは『教会』としても願ったり叶ったりでしょうが」
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