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ウラルは肩を竦め、
「教会幹部の連中には頭の固い人間も居りましてな。若い世代の考えについてこれない人間もいるのですよ」
「ふむ、老害か」
テーブルに置いてある紅茶を飲み、背凭れに体重を乗せてから老人は嘆息する。
「マグナ人を排斥、もしくは一掃することこそがバランディア王国の更なる発展に繋がるというのに。……全くもって国王のしたことは理解不能だよ、そうは思わんかね」
「奴隷解放宣言のことですか? アレは諸外国にも相当の衝撃を与えましたからね。ここ最近の執政では、最もインパクトの在った決断かと」
「あのような愚かな宣言があってたまるか。マグナ人は猿だ。人間である儂らに飼われておればいいものを」
言葉の節々からマグナ人を軽蔑しているのが感じ取れる。ここまでの人種差別主義者はウラルも久しぶりに見た。
――やれやれ、この人も頭の固い人間だと思うんだけどねぇ。
面倒なので口には出さないけれど。
「バランディア王国の更なる発展と言われましたが、教会は国のためにあるのでは無く、TA《トゥルー・アルマゲドン》に向けて信者を増やしているのです。その辺は誤解しないようにして頂きたいですな」
「君らこそ、儂の寛大な心があって初めて、この交易都市で大教会を維持できるのを忘れんで欲しいものだがね」
老人の小さな双眸がパカッと開く。黒い瞳。活発に生体活動を保持している眼だった。
「それは感謝していますよ。私が言いたいのは、教会は今回の件について口は出しません。傍観の態度でしょう」
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