Chapter1

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「傍観……。まぁ教会直々の武装集団に手を出されるよりはマシだろうねぇ」 「テンプル騎士団も黙認するとのことですよ。その一人である私が断言するので、まず間違いありません。王国軍も現在はジークフリード砦にかかりっきりでしょうし、阻む勢力は存在しないかと」  長靴のような形をしている半島はユグドラシア帝国の領土である。かの国がバランディア王国の同盟国に宣戦布告をしたため、些か緊張状態となっている。  そこと国境を接している砦に軍人は集結していて、例え交易都市で起こることを確認できても、やって来るまで数日は掛かる計算だ。 「帝国もちょうど良い時期に宣戦布告してくれたものだ。軍の眼をどう掻い潜るか、それが問題だったからねぇ。いずれにしろ、“彼女”が来てくれたお陰で計画を数年早めることが出来たのは僥倖(ぎょうこう)だったよ」  嬉々とした笑みに、ウラルは思わず尋ねていた。 「まさか帝国と繋がっているわけじゃありませんよね?」 「……だとしたら、儂を殺すのかね?」  暗に肯定しているのか。それとも、ウラルを試しているのか。  ――油断ならない爺さんだねぇ、全く。 「帝国は教会を追放した実績があります故、本部に連絡すればその処罰もありえるかと」 「だが、君は連絡しない。そうだろ? 儂のマグナ人排斥にいち早く賛同したのは君だったじゃないか」
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