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「いつからキリスト教は多神教になったんだか」
苦笑する老人に、ウラルは答える。
「そもそもキリスト教には多神教の面もあるんですよ。父と子と聖霊による三位一体とか。それに、父なる神、母なる神、子なる神を信仰しているとさえ言われていますし。まぁ、マリア信仰が始まったのは西暦時代の近代に入ってからですけど」
「教会も色々複雑なんだねぇ」
「私の苦労が少しでも解っていただければ幸いですよ。不幸なことに、お金の神様は存在しませんが」
ウラルがやれやれとこの世の不幸を嘆いていると、老人が執事に持ってこさせた札束を手渡そうとする。
が。
「これを渡すには一つ条件を付けても構わんかね?」
「先程の二つで二万ガルドですよ?」
「なーに、大して変わらんよ。銀髪の男が怪しい動きを見せたら誰にも目立たぬよう殺して欲しいのだが――出来るかね?」
「ええ、勿論」
ウラルの即答に安心したのか、老人は大人しく二万ガルドをくれた。五千ガルドで家を買えるのを考慮すれば、かなり儲ける事ができただろう。
――にしても、殺せ……か。
滅罪として葬れば、自分の罪にはならないだろうがその過程が面倒臭いなと唸っていると、
「しかし、聖職者というのは金に執着しない生き物だと考えていたのだが、儂の間違いだったのかな」
老人がニヤニヤと札束を眺める。
ウラルはそれをローブの中に隠し、
「最後に信用できるのは、お金ですよ?」
と返答した。
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