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ある晴れた日曜日
お母さんと入ったファミレスで
初めて頼んだメロンソーダ
一口くちに含んだら
シュワシュワシュワシュワあばれてる
お母さんに何だかお口の中が変だようといったら
お母さんが僕のメロンソーダを口にして
本当だウフフ可笑しいねと笑ってくれた
そんな笑顔が嬉しくて
僕はメロンソーダが大好きになった
ぼくが大好きなメロンソーダとお母さん
忘れられない思いでの味
それからしばらく時が過ぎて
高校生になった僕は少し遅めの反抗期
ただ、家に寄り付きなくて
友達と毎晩の夜遊び
その日は僕の誕生日
テーブルの上にはメロンソーダ
僕はその意味もわからずに
こんなもんいらねぇよ!!と叫んで払いのけた
テーブルの上に零れたメロンソーダに
お母さんの涙がまじりあって
シュワシュワシュワシュワ泣いていた
今でも忘れられない涙と炭酸のまじる音
飲めなかった苦い想いで
それから更に時は過ぎて
僕は社会人になっていた
毎日が忙しいある日
僕の携帯に着信音
電話は親戚の叔父さんから
お母さんが倒れたって
もう長くは無いらしいって
病院に駆けつけた僕の眼に
すっかり窶れたお母さんの姿
ある晴れた日曜日
御見舞いに行ったとき
何か欲しいものある?って聞いたらメロンソーダと応えるお母さん
僕は先生に無理いって
メロンソーダを用意した
お母さんは一口だけくちにして
何だかシュワシュワして可笑しいねと優しく笑った
僕はお母さんのメロンソーダを口にして
本当だシュワシュワして可笑しいねと……
無理して笑った
本当は涙が混じってちょっぴり苦かった
お母さんと最後に飲んだ思いでの味
それから随分と時がたち
僕にも妻ができ娘もできた
あるはれたお盆の日曜日
お母さんのお墓にご報告
帰り道に娘に何か欲しいものある?って聞いたら
メロンソーダって元気に答えた
メロンソーダを飲みながら
パパ、何だかシュワシュワシュワシュワして可笑しいねと笑う娘
僕は娘のメロンソーダを一口飲んで
本当だ何だか可笑しいねと
優しく笑った
ある晴れた日曜日
娘もメロンソーダを好きでいてくれたら
嬉しいな
そう思えた日曜日
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