6人が本棚に入れています
本棚に追加
となりのバス運転手は、すこし高いところから僕を見下ろして微笑んだ。
おじさん、微笑みっていうのはね、おなじ目線でかわしあわなきゃ、意味がないんだよ。
やっと青になった信号は、無機質なひとみで僕を見つめた。
僕は、何処へ行くんだろう。
春は暖かいなんて、誰がきめたんだい。
だって、こんなにも、まだつめたい。
まつ毛のうえでヒカリの子は楽しそうにきらきらと笑った。
僕より大きな車は、つんとした目で追い越していった。
そんなに急がなくても、みんな最後は一緒なのに。
すぎていく温かい日々は、僕をひとりにして、それでもこの芽吹く季節のなか、僕は立っていなくちゃいけなかった。
車は走る。アクセルひとつで。
僕はやっぱり目を閉じた。
眩しさと、永遠のなかで。
最初のコメントを投稿しよう!