プロローグ

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しばらく蝉の大合唱と本を捲るかすかな音だけが続いていた部屋に、新たな音が追加された。 軽やかな足音。この暑い中走ってきているのかもしれない。 「おはー」 開け放たれたドアから姿を現したのは、美しい笑顔をたたえた少女だった。 長いさらさらな黒髪に長いまつげ、スカートから見えるのはスラリと細くて白い脚。その容姿はどこかの舞踏会から抜け出したお姫様のよう。 彼女が気にする少しつり上がった目も、普段は冷たくてクールな印象を、笑ったときには暖かくて優しい印象をと、彼女の表情を変幻自在に変える一つのチャームポイントだ。
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