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そんな記憶を思い出してしまって…余計に怖くなってしまって。
トントン、とドアから音が響いて…でも、そんなノックの音は初めてで…緊張…なのですが…緊張なんてものじゃ足りないくらい…とにかく凄く緊張してました。
私はその場からとっさに逃げようとして走り出そうとしたのですが、何かに躓いて転んでしまいました。
突飛な世界は、想像しているよりも簡単に…拍子抜けしてしまうくらい簡単にドアを開けてしまうものでした。
一瞬だけドアをあけた人の姿が見えた気がした。
目を塞ぎうずくまっている私の姿に、ドアを開けた人はとても驚いていて…
「どうしたの…?」
と、心底心配したように私に声をかけた。
私は、人を石にしてしまうことを…また襲われてしまうかもしれないということを怯えながら
「私の目を見ると石になってしまいます」
と言うとその人はただ笑った。
「僕だって、さっきまで石になってしまうと、怯えて暮らしてたさ…でも世界ってのはさ、案外怯えなくてもいいみたいだよ?」
その人のおかしそうに言う言葉が部屋に響き渡る。
心の中にあふれていた想像はその瞬間から世界に少し鳴りだしていった。
その人は、そういった後、私のおでこ当たりに手を当てて、顔を上げさせた。
でも、不思議と、抵抗なんてありませんでした。
その人は少年でした、今の私とちょうど同じくらいの少年。
「大丈夫?」
少年は、私の顔を見てまた、心底心配したふうにいいました。
多分、私の顔は涙でぬれていたのでしょう…
少年は、ポケットから何やら機械を取り出して、私の前に出しました。
「とりあえず…音楽でも聞いておちつこう?」
そういうと少年は、私の返事を聞く前に、機械から伸びた線の先を、私の耳に押しあてました。
線の先からは音楽が鳴り響いていて…それを聞くと…なんだかとても落ち着いて。
少年は落ち着いてきた私を見て少し微笑んでいました。
一曲聴き終わると少年はその線を私の耳から遠ざけました。
「ありがとう…ございます」
私は小さい声で言いました。
「どういたしまして」
少年は微笑みながら私の言葉に応えてくれました。
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