決勝当日

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イリスがボイスレコーダーのスイッチを押すと同時に、会場の巨大モニターにユーナが映し出される。 こちらを睨んで囲んでいる迫力あるブサイクで底意地の悪い表情にクソ兄貴ですら顔が引きつっていた。 「イリスさん、いい加減シオン君から離れて貰えませんか?」 「シオン君の傍にあなたはいらないの」 「私が…私達こそがシオン君に相応しいの…」 冷たい目でこちらを見ながら詰め寄ってくるユーナ目から光が消えて完全に病んでいる。 イリスから見たユーナの本来の姿だ。 魔力制御が困難だが、上位の術者であれば、自分の記憶を映像として再現できるため、今写っている映像は嘘偽り無いもの。 「別に私は兄さんにくっついていません。兄から寄ってくるので鬱陶しいんです。ユーナさんから兄に言ってください」 イリスが正論を言うと、いきなり壁ドンをして更に顔を歪ませるユーナ。目がイッてる状態なのでホラー以外の何物でもない。 「それ、本気で言ってるんですか?シオン君があなたみたいな中途半端で性悪な女の傍にいるのは兄妹だから仕方なくでしょ?本当は嬉しいのに私への当てつけでそんな風に言うわけ?」 めちゃくちゃな持論を展開するユーナにドン引きの会場。 「はぁ…よく分かりませんが、私に意味不明の嫉妬を抱いているという事でよろしいですか?兄とは兄妹なので、それ以上の感情はありません。何をそんなに怒っているんですか?」 バシッ!! イリスが呆れて立ち去ろうとすると、いきなり掴みかかってきて平手打ちしてくるユーナ。 「何それ…妹の優越感って奴?1番大切にされてるからそんな態度なの?私や他のみんなと一緒に話していても、あなたが来ればシオン君は私たちを放ってあなたの元に行ってしまう…私達と話している時でさえあなたの話ばかり…目障りなのよ…あなたがいるとシオン君は絶対私達を見てくれない…だから私は…私達はあなたが憎くて堪らない。殺したい程にね…」 いつの間にか手にナイフを持っているユーナを見てイリスが素早く動き、 「正当防衛って良い言葉ですよね!!頭のおかしいあなたには、これが一番です!!」 一瞬で形成した雷のハンマーで強かにユーナのナイフを落とし、ついでに脳天に叩き込んだ。 ゴシャアアアアン!! 「グッ‥!!」 呻き声を上げて倒れるユーナ。 「あー…殺されるかと思った…(棒)全く何回殺そうとしてくるのやら…」 イリスはユーナの腹に1発蹴りを入れてからその場から立ち去った所で映像は終了した。 座り込むユーナにイリスが静かに言った。 「これじゃ兄の傍所か、普通の生活送れなくなっちゃいましたね?」 笑顔で残酷な現実を伝えるイリス。 絶望的な表情を浮かべるも、周りの友達もシオンでさえも自分と距離を取っていく。 「あ、そうだ。ちゃんと決勝戦は戦わないとダメですよ?そう言うルールですから」 笑顔で言うイリス。友達も好きな人も自分を軽蔑しているこの状況でそれを言うのかと、ユーナは涙が流す。 真実はどんな嘘より残酷だと、ユーナは身をもって思い知ったのだ。
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