携帯販売

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バックヤードで、dokumonのヘルパー、風見翔胡(カザミショウゴ)の姿を見つけた。 「ん、大丈夫」 聞いたことのない、風見くんの声。 優しい、声。 「大丈夫、いないって。」 誰と話をしているんだろう。 携帯に向かって話をしていることは解るが、こんな優しい声を聞いたことがない。 聞いてはいけないと分かっていても、今更戻れない。 取りたい在庫の入っている棚は風見くんの隣。 「瑚渡(コト)、分かってくれよ。愛してるから。」 女、だろう。 そういえば、風見くんに彼女がいるかとか、聞いたことなかったな、とふと思った。 昔から、興味のない男の恋愛事情は聞かない。 普通に、友達として居られれば良いだけだから。 風見くんも、友達。 「じゃぁ、仕事だから」 そう言って電話を切り、振り返る風見くん。 思いっきり目が合ってしまう。 「ぎゃっ!」 私の声と存在に気付き、 目をまん丸くして 「ビビったー!  マジでびっくりさせんなよー。」 力の抜けた声を出す風見くん。
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