-イノセント- 真実

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「夢まで捨てて恋人とまで別れて、一華さん一人が犠牲になったの!?」 完全に一華さんのイメージが覆されたあたしは、同情するように声を荒げた。 「それは違う! 一華の兄貴は、最後まで一華が夜に戻るのには反対した。妹の幸せを願ってたからな」 あたしに対抗するように、一瞬、響ちゃんの声にも力が入る。 でもそれは、本当に一瞬で、すぐに声量を落ち着かせると、話を続けた。 「けど、それは一華にしても同じだ。兄貴ん家には、まだ当時小さかった子供もいた。 その兄貴一人に、負担を負わせることが出来なかった一華の意志だ。 兄貴の反対を押し切ってまで、一華だって守りたかったんだよ。母親が築き上げたものも、兄貴の家庭も」 「だけど……」 「一華は、犠牲になったとは思ってねぇよ。そんな風に思ったら、全力で仕事に取り組んでいた一華に失礼だろ。 お袋さんの名を汚さないためにも、兄貴の家族に悪いと思わせない為にも、誰にも後ろ指刺されないクリーンなやり方を貫き通したんだからな」 それでも……と、思ってしまう。 あんまりだって思ってしまう。
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