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「ソルティードックが飲みたい」
「ない」
「バーなのに?」
「女子高生に飲ませる酒はないって」
「響(きょう)ちゃんのケチ」
「何とでも言え。望(のぞみ)に怒られんのは俺だぞ? 望に嫌われるよりマシだ」
「……響ちゃんは、本当にノンちゃんが好きなんだねぇ」
「当たり前」
切れ長の綺麗な瞳を細めて、フッって笑ったマスターである響ちゃんは、あたしの注文を無視して、
「イチゴミルク作ってやる」
水晶みたいに出来あがった、透明で丸い氷をしまうと、押しつけがましく勝手にあたしの飲み物を作り出す。
そんなお子ちゃまみたいな甘いものなんていらないのに。
少しくらい飲ませてくれてもいいのに。
今時、高校生だってお酒くらい飲んでるもん。
そんな "常識" を知らない響ちゃんは、ぷくっと頬を膨らませるあたしを無視して、せっせとイチゴのヘタを取っている。
もっとも、高校生もお酒を飲むっていう "非常識" よりも、断然必要な一般的常識そのものを知らない響ちゃんは、
未成年だからって理由でお酒を飲ませないんじゃない。
法律よりも、ノンちゃんの考えが第一優先。
処罰されるよりも、ノンちゃんに嫌われることを恐れている。
だから、あたしがあと3年経って大人になったとしても……。
ノンちゃんがダメと言ったら、きっと響ちゃんはお酒を飲ませてくれないと思う。
それだけ、響ちゃんは奥さんであるノンちゃんを愛してる。
それも仕方ないと思う。
高校生のあたしから見ても、ノンちゃんは大人なのに本当に綺麗で可愛らしい。
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