-イノセント- 真実

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その笑みに返したあたしの笑顔は、上手に作れていたか分からない。 だけど、今のあたしに出来るのはこれが精一杯で……。 大好きなノンちゃんを、もしかしたら悲しませるものだったかもしれないこの1ヶ月の自分の行動を、何度も心の中で謝った。 あんな話を訊かされ、初めて気付く自分の心情。 きっとあたしは、大好きなノンちゃんを愛してくれる響ちゃんに興味を惹かれたんだ。 だからこそ、一華さんの話を聞いた途端、今まで惹かれていた響ちゃんへの想いはあっけなく途切れた。 そんな簡単にも途切れてしまう感情に、名前なんて付けられるはずもない。 何て安っぽい感情だったんだろうと思う。 響ちゃんから何も聞かなければ、こんなものをいつまでも背負って、いつかはノンちゃんを悩ませていたかもしれない。 涼太だって傷つけてたかもしれない。 元ホストだと知っていても、心底惚れた女の人がいたと知っていても。 響ちゃんへの愛に躊躇いを見せないノンちゃんに、到底あたしなんかは足元にも及ばなくて。 悔しいけれど……きっと一華さんにも及ばなくて。 そして、どんなにあたしに蔑(さげす)まれても、自分の愛を否定しようとしなかった響ちゃんの方が、よっぽど実直だとすら思えてくる。 「じゃあ、七海。気を付けて帰るのよ?」 いつの間にか辿り着いていた駅の前。 あたしの頭をひと撫でするノンちゃんに、 「気をつけるも何も、直ぐそこだよ? 心配しなくても大丈夫だよ」 当然、ノンちゃんだって知ってるはずの、ここから1分ほどで着く我が家のマンションを指差した。 「それもそうね。それじゃあ七海、またね。今度、美味しいチーズケーキ屋さん見つけたから一緒に食べよ?」 頷くあたしに、にこやかな笑顔を置いて背を向け歩いてくノンちゃんに、あたしはもう一度声を掛けた。 「ノンちゃん!!」 黒のスパンコールが散りばめられたポーチに手を突っ込みながら振り返ったノンちゃん。 せめてこれだけは伝えておきたかった。 浅ましい自分を追いやって、正義感気取りで響ちゃんを責め立てることしか出来なかったけど、これだけは嘘じゃないから。
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