- イノセント- 真誠

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身内を救いたいが為に、夢も恋も捨て去って必死に生きただけ。 そんな女を愛したことを、嘘になんてしたくはない。 どれだけ一華が気張って生きて来たのか……。 一華が夜を上がった後、一華のスタイルを見本に仕事を続けた俺には良く分かる。 きっと、人知れず涙を流した事もあったはずだ。 それでも毅然と自分のスタイルを貫き通した一華は、どれほどの重圧をも背負っていたことか、 それをいち早く気付くには、俺もまたその当時は若過ぎた。 今なら分かる。 何よりも誰よりも一華のことを……。 本当は俺との歳の差を、もの凄く気にしてることも、 愛する者から嫌われるんじゃないかって、怯える弱さがあることも、 本当は強いだけの女じゃないんだって、俺だけが知っている。 そういう女を心から愛している俺の気持ちは揺るぎようがなく、七海も良く分かったはずだ。 いや、充分分からせたはずだ。 本当なら、言うべきではなかったのかもしれない。 知らないで済むならそれにこしたことはない。 全てを話すことが正しいとも思っちゃいない。 逆に俺達にとっては、知られたくもない話だ。 それでも俺が過去の話を打ち明けたのは、無垢(むく)な七海に予防線を張りつけて置きたかったがため。 きっと今頃、七海を混乱させてるに違いない。 望という存在があるからこそ、俺を見る目も成り立っていただけに軽蔑もしているだろう。 そして、その軽蔑と引き換えに、望の存在をより強く感じてるはずだ。 俺が望だけでなく、一華も愛しているのなら、自分だけは望を絶対に裏切りはしないと……。 それでいい。 今はまだそれだけでいい。 七海にとって、どれだけ望が大切な存在なのか、改めて知って欲しい。 それが、七海が思っている以上に、望がどれだけ七海を愛しているかを知る術にも繋がる。 でもいつか……、 「………響…?」
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