出会い

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「神崎さんは自分でお弁当作るんですか?」 翔也の言葉で、また会話が始まる。 「…あ…うん…」 「へぇ…すごい美味しそうですね」 「え…?そ…そうかな…?」 「…うん、神崎さん、料理上手なんですね、俺には解ります」 …ほら… また女心くすぐってる…。 「…ゆ…悠木くんも、彼女とかに作ってもらえばいいじゃない」 隠しきれない動揺を胸に、私は翔也に必死の言葉を取り繕うと、翔也はじーっと私の瞳を見てからクスっと笑った。 …な…何で笑うの…? 「俺…彼女とかいないですよ」 「え…?そうなの?…もったいないね」 「…?」 「…あ、だって悠木くんすごいカッコいいからモテるでしょ?」 「…はい、まぁそうですね」 サラリと言う翔也が、小憎らしい。 じっと私を見つめ続ける栗色の瞳が、あまりにも眩しくて、私はまたお弁当に視線を落としながら言った。 「だよねぇ…悠木くんならモテて当然だもんねぇ」 「そういう神崎さんもすごく素敵ですよ」 「…へ?」 再び絡む視線に私は、またドキドキする。 「…おばさんからかってどうすんの?」 作り笑いで必死に答えると、私をじっと見つめたまま翔也の唇が滑るように続ける。 「神崎さんって何歳なんですか?」 「…もう30歳だよ」 「…そんな風に見えないですよ」 「またおばさんからかってる…」 「ホントに見えない。すごい綺麗だと思います」 栗色の瞳をキラキラさせたまま言う翔也に私はまた体がムズムズと疼きだす。 「…悠木くん、お世辞もほどほどに」 クスっとまたいたずらっぽく笑う翔也に何とも言えない妙な感覚を感じながら私はお弁当をかき込んだ。
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