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いつもたった1行だけの蓮のメール。
そこに私と蓮の関係が、はっきりと象徴されているような気がする。
愛のない関係。
ときめきも何もないまるで事務的な。
ケータイを見つめる私を、じっと見る翔也の視線を感じて、私は慌ててニコっと笑って誤魔化した。
「…はは、迷惑メールってうざいね」
この微妙な気持ちを気づかれたくなくて私は作り笑顔で取り繕う。
「…彼氏ですか?」
「ちがっ…迷惑メールだよ」
「…そうですか」
じっと視線を動かさないまま私を観察してるような翔也の目。
…ほら…その目…蓮に似てる…。
何だろう…胸が苦しい。
「ちょっとおばさんは化粧直し行って来るね」
急いで私は休憩室から出てトイレに逃げ込んだ。
「はぁぁぁ…私…何してるんだろ…」
鏡に映る、少し疲れた顔の自分にため息をつく。
やっぱり…明日からは翔也と一緒のお昼休みは避けよう…。
必要以上に念入りに鏡で自分をチェックして、時間潰ししてから休憩室へと戻った。
休憩室に戻ると、テーブルの上にこめかみをくっつけて、翔也が目を閉じている。
…ね…寝てるし…。
私は眠っている翔也の顔をまじまじと見た。
…綺麗な顔立ちだな…
ハリのある艶々の肌は白く透き通っていて柔らかそうな唇、だらんとこちらまで伸ばした左手はスラリと長く、その先にはゴツゴツとしている手なのに、綺麗な指。
うっとりしながら翔也の寝顔を眺めていたら、栗色の前髪が、サラリと音を立てて翔也の片目を塞いだ。
…触れてみたい…
ドクンと鳴った自分の鼓動に私はうろたえた…。
やっぱり…私…この子に恋してる…?
…いや…私はもう30歳だぞ。
彼はまだ17歳の高校生。
恋の対象には絶対ならない年齢差のはず。
…でも…その前髪に触れてみたい…。
私は恐る恐る翔也の前髪に手を伸ばした。
そっと前髪を元の位置に戻す…。
…あ…柔らかい髪…
細くて柔らかくて、まるで猫の毛みたい…
その時、翔也の目がパチっと開いた。
ビクっとして手を引いた私と翔也の視線が絡む。
…触ったの気づかれた…?
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