自覚

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「やっぱり茜は料理上手だね。 このポトフの味付け、ちょうどいいよ」 蓮の褒めてくれる言葉が、本当に心地いい。 「また…晩御飯作ってもいい?」 私が聞くと、蓮は柔らかく笑ってから言った。 「あまり気を使わなくていいよ。 でも毎回は作らなくていいからね。 あまり外食すると…ね…」 蓮の言葉にまた現実に戻される。 解ってる… 奥さんも蓮の為に食事を用意して待ってるからって言いたかったんだよね… でもそれを言葉で言わず理解させる蓮のずるさが痛い…。 ベットの中で蓮の体温を感じながら、私は再び現実から逃避した。 「茜…愛してるよ…」 蓮の切ないくらいの言葉に私は自覚する。 私は…蓮から離れられない…。 そして蓮も…私から離れない…。 もう恋なんてしない… 私には蓮しかいないのだから… 激しく私を躍動させながらも、蓮のどこか冷めたような目と、翔也の切れ長の目が私の脳の中で重なりあって私はどんどん深みへと落ちて行った。 ・
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