心のブレーキ

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急いでレジに戻ると、何事もなかったかのように翔也はレジをこなしていた。 レジに戻った途端に女性客が並ぶ翔也のレジを眺めながら私は思わずため息をつく。 「神崎さん、どうかした?」 ボケーっとしてる私の顔を覗き込んで中谷さんが不思議そうな顔をしている。 「あは…ちょっと寝不足で…」 「最近なんか疲れてるようだものね、大丈夫?」 「はい、何とか」 引きつった笑いを浮かべると中谷さんは 「まぁあんな素敵な男の子がそばにいたら気疲れするわよねぇ」 と言ってアハハと豪快に笑っている。 …いや…そこじゃなくって… …まぁいいや…いちいち否定するのもめんどくさい。 そう思いながら再び翔也の方に視線を送ると、私を冷たい目で見つめる翔也と視線が絡んだ。 …うっ… やはり指を食いちぎろうとした私が王子様はお気に召さなかったようだ… 完全に怒ってる視線…。 ごめんなさい、すいません、お許し下さい…二度としません… というか食いちぎろうなんて思ってません…。 ひたすら翔也に心でお詫びをしながら視線を送ってペコンと頭を下げた。 …無反応のまま視線を避けられる。 ごめんなさい光線は届かなかったか… 明日のお昼はきちんと謝らないとだな。 …気が重い。 結局その日、私は数えきれないほどため息をついた。
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