心のブレーキ

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…翌日のお昼休み。 「悠木くん、昨日はごめんなさい」 勇気を出して、私は頭を下げた。 「何が?」 「…えっと…その…指を…」 「あぁ、蓮の事?」 …じゃなくて、指食いちぎろうとしたって部分なんだけど…。 私をじっと見つめる翔也に何も言えずうるうると翔也を見つめる。 「…で?蓮って誰なの?」 「…………えと…」 「神崎さんの彼氏なんでしょ?」 「…彼氏っていうか…その…」 「不倫相手とか?」 「………!」 13歳も年下の高校生からそんな言葉を突きつけられると思ってなかった私は過剰にその不倫という言葉に反応してしまった。 「…ぷっ…何その反応。図星って事か」 「…あ…いや…ちが…」 「もういいよ。その代り明日はお弁当、俺の分も作って来て」 …は?… 私がポカンとしたまま翔也を見ていると クスっといたずらっぽく笑った。 「解った?」 「…はい…」 …まるで奴隷。 30歳にもなって、17歳の高校生に命令口調で言われても抵抗すら許してもらえない日が来るなんて…。 私は小さな抵抗を試みた。 「…指…食いちぎろうとしてないから」 「俺の指を甘噛みした女は神崎さんが初めてだよ。あーやって蓮を誘ってるんだ」 …無駄な抵抗だった。 完全に上から目線でクスクス笑いながら言う翔也が小憎らしい。 「…こ…高校生のくせに生意気…」 「高校生でも立派な男だから。 あんな事されたら、次は襲い掛かるよ?」 「…はっ?」 すごい発言をサラリとしておいて、クスクスと笑う目の前の高校生に、私はどうしていいのか解らないまま、もくもくとお弁当を食べた…。
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