葛藤

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いつもより2時間も早起きして、私は朝から二人分のお弁当を作っている。 唐揚と先日喜んでくれた卵焼きも入れてあげよう、野菜も必要だから煮物も…とか、考えてるだけで私は楽しくてたまらなかった …そうか… 蓮にお弁当なんて作る事は絶対ないし、こうして誰かの為にお弁当作るなんて初めてだったからウキウキしてるんだな。 「悠木くん喜んでくれるかな?」 おかずでいっぱいのお弁当を持って、私はスキップしたいような気分で出勤した。 やけに長く感じた午前中の仕事を終わってやっと待ちに待ったお昼休み。 「はい、お弁当作って来たよ。 悠木くん、これで許してくれる…?」 おずおずとお弁当を差し出すと、翔也はニヤリと笑って言った。 「食べてから考える」 …チッ 一筋縄では行かない17歳だ。 「じゃ、ありがたく頂きます」 ニコっと笑って手を合わせてから、お弁当の蓋を開ける翔也をじっと観察する。 「…お…」 蓋を開けて、しばらく品定め中の翔也。 …嫌いなおかずがなければいいなと思いながら、私はドキドキと観察続行する。 「…ありがと、茜♪」 「あ…?あ…茜って…呼び捨てかよ!」 私の突っ込みなんて完全スルーの翔也は 「この唐揚、超うまそう♪」 とご機嫌にパクッと唐揚を口に放り込む。 「ん!うまっ!」 …良かったぁ… これで許してもらえるっぽい。 卵焼きも煮物もどうやら嫌いではないようで、パクパクと美味しそうにお弁当を食べる翔也に、やっと私も安心して自分のお弁当の蓋を開けた。  
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