葛藤

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「やっぱ茜は料理上手だね」 「…だから、勝手に呼び捨てしないの」 「だめ、これからは茜って呼ぶから」 「…あの…13歳も年上なんですけど…」 「年齢とか関係ないでしょ」 お弁当をつつきながらの翔也との会話は、少しずつ、私の生きてるのか死んでるのか解らないようだった人生に、柔らかい日差しが差し込めたような暖かさを感じていた。 「んー、美味しかった!ごちそうさま」 顔の前できちんと手を合わせて満足そうに言う翔也を見て、私は自信満々に聞いた。 「じゃこれで、許してもらえるよね?」 翔也の目が、またニヤっと笑って意地悪そうに豹変する…。 「指食いちぎろうとした事は許すけど、まだ蓮に間違えた事は許してない」 「……は…?」 「高校生を甘く見るな♪ 当分茜は奴隷だからね」 …ははは 完全にナメられまくってる。 でもまたお弁当作っていいんだ。 そう思うと少し嬉しいと感じる自分に笑ってしまう。 「ねぇ茜、明日の休み予定ある?」 「…え?…何もないけど…」 …だって蓮は週末は絶対来ないから…。 「じゃ俺とデートね」 「は?…私、30歳のおばさんですけど…?」 翔也はまたいたずらっぽく笑って言った。 「茜は俺の奴隷でしょ?そこの駅に朝9時集合厳守。言う事聞かないと罰ゲームだからね」 「…無理!」 「じゃ罰ゲームする?」 「罰ゲームって…?」 「今、ここで素っ裸になって貰うかな」 私は悔しさいっぱいで翔也をジロリと睨んだ。 「そんな目してもダメだよ。 さて、茜はどっちにする?」 テーブルに頬杖をついて笑う栗色の瞳は恐ろしいほどキラッとしてる。 私がときめいた17歳の高校生は、羊の皮をかぶったドSの王子様だった。
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