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この観覧車は1周するのに15分と乗り場に書いてあったけど、するすると登って行く観覧車のスピードがとても早く感じてしまうのは、たぶん私がもっと翔也と一緒の時間を過ごしたいってどこかで思っているからなんだろう。
じっと黙って遠くの景色を眺めている翔也をコッソリと見ると、栗色の瞳にオレンジ色に染まった太陽の光が反射してますますキラキラ輝いている。
…綺麗な夕陽色…。
考えてみたら観覧車の中は完全な密室で、今この空間に翔也とふたりだけな訳で…
恋愛小説なんかだと、こういう場面でカップルが初めてのキスとかしちゃったりするんだよね…
「茜…」
「はっ…はいっ!」
危なくその妄想の先に進む手前で、翔也に名前を呼ばれて私は驚きの返事をしてしまった。
「…何ビビってんの?」
「…いや…急に呼ばれたから…」
「…ふぅん…?」
また意地悪そうな目で私を観察した翔也が、突然私の手を掴んで、自分に引き寄せた。
「わっ!」
急に近くなった翔也の顔に、私の心臓がドクドク言い出した。
…何…?…何…?…どうするの?
「髪の毛にゴミついてる」
「…へっ?」
クスクス笑いながら翔也が私の髪に
絡みついてたゴミを取ってくれた。
な…何を期待してるんだ私は!!
あぁ…やっぱりおばさんには残酷すぎるよ、君のその笑顔…。
「…あ…ありがと」
下を向いてすごすごと腕を引かれて詰まってしまった翔也との距離を元に戻す。
「キスされるとでも思った?」
…!
また心の中を読まれてビックリして見上げると、ニヤリと笑うあの小憎らしい表情の翔也。
くっそー…大人をバカにしやがって…
…でも私の心臓はいまだにすごい量の血液を搬出しているようだ…。
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