夢と現実

2/7
前へ
/65ページ
次へ
翌朝、私はまた2時間も早起きして二人分のお弁当を作っている。 今日は豚の照り焼きをメインに奮闘中。 バランスや彩りも考えて作るお弁当はだんだんと気合いが入った仕上がりになって行ってしまうのが自分でも面白くてたまらなかった。 いっぱいスタミナつけさせてあげなきゃいけないな… そんな事を考えていた時に、ケータイにメールが届いた。 まだ5時半なのに…迷惑メールかな? そう思いながらケータイを取るとそこには 『蓮からメールが届きました』 の文字が表示されていた。 …こんな早い時間に蓮からメールが来るなんて、この8年で初めての事だったので私はそのメールを開くのをとても躊躇した。 …なんだろう… なんだか嫌な予感がして、微妙に震えてしまう指でメールを開いてみる。 『妻が自殺未遂した。 しばらく会いに行けないけど必ずまた連絡する。 茜は何も心配しなくて大丈夫。』 私はしばらくそのメールを見つめたまま、自分の頭の中を必死に整理した。 何で蓮の奥さんが自殺未遂? いったい何が原因で? …まさか…私の存在がバレた? 考えれば考えるほど、自分はどうしたらいいのか解らなくなる。 震える指で一生懸命メールを打った。 『何があったの?蓮は大丈夫なの? 私は何も蓮にしてあげれないの?』 蓮からの返信はないまま、気が付けばもう8時を回っていた。 …出勤の時間だ。 私は後ろ髪を引かれる思いで、重い足を引きずってお店に出勤した。 つい3時間前までは、あんなに翔也の為に作るお弁当で胸を弾ませていたはずの私はなんとも言えない気分で翔也のロッカーにお弁当を入れた。 …きっと… 私が13歳も年下の男の子にときめいたりして浮かれてたから… 大切な蓮に罰が下ったんだ… 翔也に恋をしていても、私が蓮を愛してる気持ちに変わりはない。 8年もの月日をずっと蓮にささげて生きて来たのに… …私は何を浮かれてたんだろう。 情けなくて泣けて来る…。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1876人が本棚に入れています
本棚に追加