夢と現実

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曲がり角を折れると、あの懐かしい会社の建物が見えて来た。 急に怖くなって足を止める。 …こんな所まで会いに来て… 私は余計に蓮を苦しめるんじゃないだろうか……? もし、これで蓮に会えても… 私は蓮に何もしてあげれないんじゃないだろうか… …無理だ… これ以上は私には進めない…。 私はクルリと向きを変えた。 蓮に会いたいと思う気持ちと、この先に進むのが怖いと思う気持ちが心の中で葛藤して、足が動かない。 …蓮……蓮… 心の中で叫ぶ名前に自然と涙が溢れ出す。 「…茜…?」 愛しい声が、私の名前を呼んだ。 振り返ると、そこには蓮が立っていた…。 「…蓮…」 涙でどんどんぼやけるその姿に私の体の力が抜けて行く。 「茜!」 駆け寄って来る大きな胸に私は倒れ込んだ。
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