夢と現実

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「茜、大丈夫か?」 会社の近くの公園のベンチで私を心配そうにのぞき込む蓮に私はもたれかかったまま遠くを見つめていた。 「…蓮…話して欲しいの…何があったのか私にも話して…」 「…………」 「もう私は蓮には必要ないの?」 溢れる涙もそのままに私が放った言葉に蓮の瞳が悲しく揺れた。 「…違うよ茜… …俺は5年前からずっと妻と話し合って来たんだ…離婚してくれってね…」 蓮の衝撃的な言葉に私は蓮を見つめた。 「…茜にはきちんと離婚したら話すつもりだった。 お前はいつも俺に気を使ってくれて…幸せにしてあげたいってずっと思ってたからね」 …そんな風に私の事思ってくれてたなんて全然気づかなかった… 「1ヶ月前…本当はあの日やっと妻が離婚を承諾してくれて、離婚届にサインをしてくれる約束だったんだ…。 だけどいつまで経っても浴室から出て来なくて、おかしいと思って様子を見に行ったら…あいつが手首を切って倒れていた。 今はだいぶ落ち着いて来たけど… まだ精神的に不安定だから入院させてる。 でも1日でも俺が病院に行かないと、暴れるんだよ…。 …だから…茜にも会いに行けなかった」 いつもどこか冷めたようだった蓮の目が、悲しそうに揺れたまま私を見つめた。 …こんなに…蓮が苦しんでいる… 私のために…こんなにも悲しんでいる。 たった1ヶ月会えなかっただけで、ボロボロに崩れた自分が情けなかった… …蓮と奥さんのこの5年間は… いったいどれほど辛い年月だったのだろう。 そして…その原因を作ったのは間違いなく私だ。 …蓮…ごめんなさい…。 …蓮の奥さん…ごめんなさい…。
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