失った心

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蓮と別れた帰りの電車で、私は周りの目も気にせずポロポロと溢れ出す涙もそのままに泣き続けた。 私の方が奥さんよりずっと蓮を愛してるって思い続けてた自分がとても惨めで、バカバカしくて… 自分の命をかけてまで蓮を愛してた奥さんに、私は完敗した。 もし私が今日、蓮に別れを言わなくても、いずれそうなる日が来ただろう。 …私は…奥さんに負けたんだ… 駅の改札を出て、トボトボと家に向かって歩く。 今にも、崩れてしまいそうな体を必死に私は進ませた。 これからは私は一人で生きて行かなければならないのだから… やっと家が見えた時、ふと翔也の事を思い出す。 「また明日」 この場所でそう言った翔也の笑顔を思い出して、私はますます自己嫌悪に陥った。 …もう…私には何もないんだ… ドアをやっとの思いで開けた私はそのまま玄関に倒れ込んだ。 自分の情けなさに、次々と溢れて来る涙が床に落ちて行く。 それは私の心の中にあった宝物が全部涙と一緒に落ちて行くような気がした。  
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