記憶

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「…茜…?」 その懐かしい声が私の名前を呼ぶ…。 「…悠木くん…?」 あの頃と全然変わらない、栗色の切れ長の瞳。 サラサラの茶色い髪が相変わらず艶っぽい。 私が恋したあの時と変わらない翔也の姿がそこにあった。 「…何で茜がここにいるの?」 翔也の言葉にハッと我に返る。 「…派遣で働き出したんだけど…って言うか、悠木くんこそ何でここにいるの?」 驚いたような顔から、急に翔也の顔がキリっとして言った。 「…俺…一応この会社の副社長なんですけど…」 「…へっ??」 「…ここ親父の会社だからね。 まだ俺、学生なのに無理やり副社長にされたの」 …ま…まじですか…? 「…っていうかさ、茜、俺に何か言う事ないの?」 「あ…えっと…お…お久しぶりです」 ペコリと頭を下げる私に、翔也は呆れたような顔をしている。 「そこじゃなくて! 何であの時、俺の前から急に消えたんだってとこだよ」 「…あぁ…そこね…えっと…」 どこから説明したらいいのか解らなくて、モジモジしてしまった。 「…まだ蓮と一緒にいるの?」 翔也の口から吐き出されたその名前に、私はビクっとした。 おずおずと翔也を見上げると、あの観覧車の中で見た刹那そうな瞳で私を見つめている。 「…蓮とは…あの時に終わったんだよ…」 「…え?」 「悠木くんが夏休み最後のアルバイトの前の日に…終わったの」 「…は?それで俺の最後のバイトの日来なかったの?」 「…うん…だって泣きすぎて凄いひどい顔だったから…仕事行けるような顔じゃなかったし…」 ボソボソと言う私を見て、翔也がクスクスと笑い出した。  
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