記憶

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「茜……」 翔也が何か言いかけた時、経理課の部屋に相川課長が入って来た。 「あら、副社長、また経理チェックですか?」 「…あぁ、相川課長こんばんわ」 私からスッと視線を外して翔也が、相川課長に挨拶する。 激しくドキドキしてる私も慌てて冷静を装った。 「神崎さん終わった?」 「あ…、今終わったところです」 「そう、じゃもう上がっていいわよ、お疲れ様」 「あ…はい、お疲れ様です」 事務的に言う相川課長の言葉に、私は急いでデスクを片付けて退社の用意をした。 「じゃ、茜、また明日ね」 ニッコリ笑って言う翔也に、相川課長が驚いたように翔也と私の顔を交互に見た。 「副社長、神崎さんとお知り合いなの?」 「ええ、高校の時のバイト先で一緒に働いてた事あったんで」 「まぁ、それはすごい奇遇ね、神崎さんもそれなら最初から言ってくれたら良かったのに」 私に向かって言う相川課長は、なんだか好奇心満々の目で見られた気がして、嫌悪感を感じた。 「…じゃ副社長、私もそろそろ退社しますけど、まだ集計ご覧になりますか?」 「…ええ、もうちょっと確認しておきたいので」 「そうですか、じゃ神崎さん帰りましょう」 …本当はもう少し、翔也と話していたかったけど、変に相川課長に思われるのも嫌だったので 「はい」 と頷いて相川課長と一緒にドアに向かった。 「お…お疲れ様です」 私が翔也に向かって言うと、翔也はクスっと笑いながら、ヒラヒラと手を振った。  
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